こわい話をしてあげる/第三夜
ボ、ボク怪談って苦手なんですよぅ。やだなぁ。ほんとにやれってんですか?皆さんの話だけで充分じゃないですかぁ。
わ、わかりましたよぅ。……えーと、ボク自身の体験じゃなくて、友達から聞いた話なんですけどね。
オカルト映画がすっごい好きなヤツがいるんですよ。そいつの部屋ね、うさんくさいオブジェとかモンスターのフィギュアでいっぱいで、いつもやたら薄暗いんですよ。あ、料金滞納で電気止められてたって言ってましたけどね、一度。自分で映画作ったりなんかもしてるみたいで、この前久しぶりに会ったときにボクが遭遇した事件の話とかしたらもうすっごい喜んじゃって。是非ソレをもとに映画作りたいなんて言っちゃって。
い、いきなり殴らないで下さいよぅ。……あ、そっか。こんなこと関係者以外の人に迂闊に喋っちゃマズイですよね。公式的には常識の範囲内で解決したことになってるんだし。こんど口止めしときます。すいません。
でね、そいつが二ヶ月くらい前に、映画作ってる仲間と一緒に怪奇スポット巡りをやったらしいんですよ。今度作る映画の下調べだっつって。で、できれば大人数の方が面白いってんで、その仲間の知り合いで、今まで参加したことなくてもそういう映画に興味のある人に声をかけてもらって、何かトンネルとか変な廃屋とか、そういった所をまわって、ついでに資料として各スポットのビデオも撮ったそうなんです。
何ですかオチが読めたって。どーせ何かそれらしいモノが撮れたとか変な音が入ったとか、そんなところだろうと思ってるんでしょ。違うんですよ。まあ聞いてくださいよ。
まあ、そいつもそういうことを期待してはいたらしいんですけどね。カメラが映らなくなるとか、マイクの音が入らなくなるとか。でも、そういうことは撮影中は起こらなかったそうなんです。それで、がっかりしつつも撮影は無事終わって、そのあとフィルムを現像して、皆で見ようってことになって。
――そう、現像。デジタルビデオじゃないんですよ。今ね、逆にデジタルじゃないモノのほうがイイんですよ。なんかこう人の手で作りましたーっていう満足感っていうか、完璧じゃないところがイイっていうか。
話ズレましたね。そんでね、一緒に撮影した仲間に連絡とって、撮影から一週間くらい経ってからそいつの家でフィルムを見ることにしたんですよ。そしたら、ひとりだけ連絡のとれないヤツがいたんですね。そいつの手元に電話番号がなかったとかで。誰かに聞こうにもそのときちょっと時間がなくて、それで仕方なく連絡とれた仲間だけで集まって試写会をやったらしいんです。
で、見てみてもフィルムの方にも全然幽霊とかは映ってなくて、皆なんとなくガッカリしながらフィルムの終わり近くまで来たんですね。で、最後に皆で「じゃ、今日はお疲れ様でしたー」みたいなシーンが映ったときに、仲間のひとりが「あっ!」ってすっごい驚いた声出したそうなんです。で、何だ何だって思ってたら、画面指差して真っ青になってこう言ったらしいんです。
「こいつ、一ヶ月前に死んだヤツ……!」
そう、撮影仲間のひとりが、そん時もう死んでた人だったんですよ。試写会に誘おうとして、唯一連絡が取れなかったのがその人だったんです。だけど、フィルムにはすごく自然に映ってたそうです。言われなければ、誰もそれが幽霊だなんて思わなかったぐらい、ハッキリ映ってたそうですよ。それどころか、ボクの友人の方は、カメラを通さずに肉眼で見て、それが撮影仲間のひとりだと思い込んでたくらいですからね。だから連絡をとろうとしたんだし。
あとで聞いたら、彼以外の人にはその姿は見えてなかったそうです。
この前聞いたばっかりの話なんで、もー恐怖全然薄れてないんですよぉ。思い出すだけでも怖いんです。ううぅ。なんかクーラー効きすぎじゃないですか?寒くないですか?
え、フィルム?
多分まだ持ってると思います。なんかすごい喜んでたから。なんでしたっけ、ホラ、ちょっと前にあった映画。ドキュメント風の。森の中で失踪した学生の記録映画みたいなヤツ。あのフィルムをもとにして、あんな感じの映画を作るって張り切ってましたから。全ッ然懲りてないですよねぇ。